修復理念

 美術作品が本来有する魅力を埃汚れやニスの変色により、観賞の邪魔をすることがあります。また亀裂や剥落、キャンバスの裂けなど劣化により物理的な破損が起き、作品の価値が半減させてしまうことがあります。そして、その状態を放置することにより作品自体が朽ち果ててしまう可能性があります。

 作品を複製することはできても、失われてしまった作品を取り戻すことはできません。だからこそ、世界で一点しか存在しないあなたの大切な作品を何世代にも亘って良好な状態で受け継いでいくには、手間暇を惜しまず地道な修復作業を1つずつ丁寧に行う他に手段はありません。

 誤った保存方法やアクシデントなどにより美術作品は非常に簡単に損傷してしまいます。早い段階で損傷を発見し、処置を行うことで最小限の被害に抑えることが可能です。ぜひご自身の所有作品を点検してみてください。

 当工房は作品の劣化のプロセスを止め、審美的な性質を取り戻し、市場価値を高めることを目指しています。

 また修復をする上で常にオリジナルを尊重し、できる限りオリジナルへ戻すことを大切にしています。

 そして文化遺産修復の原則を可能な限り尊重します。

安定性

さまざまな処置に使われる材料が、文化財の修復・保存のための特定の仕様を満たしている。

可逆性

文化財の修復・保存に使用される素材は、いつでも元の素材よりも強度が弱く、作品への重大な損傷なしにいつでも除去することができる。

可読性

修復した部分が後世の修復の際に除去しやすいように、専門家にはわかるようにする。

最低限の処置

修復を施す箇所、処置は可能な限り最小限にする。

サービス内容

古典絵画作品から現代アート、額縁修復の豊富な経験をもとに修復・保存・額装・調査・研究など総合的な技術提供を致します。

  • 油絵、パステルなどの絵画修復
  • 彫刻作品などのオブジェクト修復
  • 額縁修復
  • 保存に適した額装提案・作成
  • 展示環境も含めた保存保全アドバイス
  • 写真撮影(斜光・紫外線・赤外線・X線)
  • 調査記録・報告書作成
  • 金継ぎによる陶器の修理

など...

金継ぎとは日本の伝統的な陶器の修理方法です。漆を使用し割れやかけを接着し、金などの金属の箔や粉で装飾するため、食器などに使用可能な人体に安全な技法です。

修復の基本的な作業

1.事前調査

材質、技法、劣化状況などできる限りの情報を調査、撮影、記録します。

この情報をもとに修復手順や方法、使用する材料などを依頼主との協議の末決定します。

2.クリーニング

鑑賞の邪魔になるような埃や汚れ、黄変ニスの洗浄をテストをしながら行います。

黄変ニスの洗浄は溶剤を使用するため細心の注意を払い、グレーズ(作家による陰影をつけるために薄い層を重ねる技法)や経年による黄変をすべて除去しないように作業します。

3.剥落止め

亀裂や剥落を支持体に固着します。2と3は作品の劣化状況により前後します。

4.充填、補彩

絵具が欠けている場合、その部分の高さを調整し周囲の筆の跡や絵の具の塗りによる凹凸に合わせて彫刻します。そして、その充填部分のみに補彩を施します。

5.保護ニスをかけ額装

木枠や額縁が痛んでいたら、必要に応じ補修します。

6.修復記録報告書の作成

全工程を写真で記録し、報告書の形で依頼主の方に作品とともにお渡しします。

プロフィール

吉田 さやか

 日本の美術修復学校にて美術品修復、額縁修復を学び、鎌倉美術修復工房にて勤務。多くの絵画作品初め、彫刻や額縁修復、企業の絵画作品調査の実務経験を積む。

 そしてより多くの修復の経験と、更なる技術の研鑽に向け、フランスに移住。パリの有名修復工房で日本では経験することが難しい、酷く傷んだ絵画や古い絵画を数多く修復。

美術館での企画展のため、貸し出し前後の状態調査や古城の絵画修復など、幅広い経験を積む。

 現在パリ近郊アニエールにてフリーランスの修復家として活動。

修復、調査実績

マルク・シャガール、アメデオ・モディリアーニ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、藤田嗣治、リ・ウーファン、安井曽太郎、モーリス・ドニ、モーリス・ユトリロ、フランク・ステラ、アンドレ・ドラン、バルビゾン派など